ビジネスホテル・ファミリー

Budget hotel family

2021年/日本語/日本/79分/ジャパンプレミア

解説

コロナ禍で自主映画の全国劇場上映の旅を始めた遠山雄。彼に誘われカメラを回した私は、北の果てで二人の人生の先輩と出会いました。出来心でカメラを向けた結果、私たちは二人の将来に影響を与えてしまった。「人は変われない」と言われているが本当にそうなのか。社会問題として取り上げられてはいないですが、現代にはこのホテルと同じ現象が各所で起きているかもしれない。この物語ではそのような悲しい人間の普遍性が漂っています。

あらすじ

北海道の東側に位置する街「網走」。小さなビジネスホテル「ファミリー」のオーナーである”片山”は二年前に網走川でホームレス生活を送っていたある老人”板垣”を救いホテルに匿った。そして現在、コロナ禍で宿泊客もまばらなホテル。そのホテルには板垣が今も住み憑いていた。片山の親友である”遠山”は全国を旅していた道中にその変わり果てたホテルを目にする。ホテルは汚れ、財政難になっていた。この老人が原因だと確信した遠山は板垣を追い出そうとするが、片山と板垣の二人は不思議な絆で繋がれていた…。

監督

林純也
北海道苫小牧市出身の28歳。立教大学映像身体学科にて映画製作について学ぶ。卒業後は経済的な理由から映像を主軸とした生活はずっとできず、PC販売やホテルマン、清掃業などを兼業。コロナ禍をきっかけに映像を仕事にしたいと決意し、現在は監督として長編ドキュメンタリー映画を制作する全国行脚の旅に出る。「ビジネスホテル・ファミリー」という映画はその制作の一部を切り取った作品であり、初の長編映画となった。

スタッフ&キャスト

監督 林純也
プロデューサー 遠山雄
出演 片山智樹、板垣和幸、遠山雄、伊藤真麻
スタッフ タテタカコ(音楽)/田森有子(字幕)

上映スケジュール 7/28 thu – 8/1 mon

Director’s Voice

1.映画制作をはじめたきっかけは?

小さい頃から人生には決められたレールがあると思っていました。勉強をして部活も頑張って就職率の良い大学に行って公務員か大企業に務める。だけど大学受験に挑む時に全く勉強する気がなくなってしまい、そのまま大学も受からず浪人をすることに。レールから外れ気力もなく自宅にいるとき、小さい頃からいつも映画がそばにいた事にふと気づきました。思い返してみれば学祭でも映画を作っていました。それを機にレールなんて元々なかったんだと強迫観念から解き放たれて、映画を作りたいと上京したのがきっかけです。

2.影響を受けた作品や監督は?

「mommy」(Xavier Dolan)は初めて何度も劇場に足を運んだ作品です/「The Lord of the Rings: The Return of the King」(Peter Jackson)はゲームも買い武器や自分なりの種族を造形しました。ただのファンです/「Biutiful」(Alejandro González Iñárritu)は僕の制作する上での指標になっています/「ソナチネ」(北野武)は演技指導と監督の違いを体感させてもらった大学時代のバイブルです/「Bill & Ted’s Bogus Journey」(Peter Hewitt)は映画のワクワク感とシュールコメディを人生の一番最初に教えてくれました。

3.本作の制作動機、インスピレーションは何でしたか?

撮影地の網走に向かう当初の目的は元々違うものでした。たまたま恋人や夫婦に似た関係をもつ47歳と74歳の男性達に出会い、離別までを追わねばという義務感を抱いたのが本作の制作動機です。旅先で宿泊先に選んだホテルにはホームレスだった老人が定住をしていて、その時はどんな物語が起きるのかもわからずただカメラを向けました。それから段々と問題が浮き彫りになり、ホテルオーナーと老人の依存関係から目を背けることができなくなりました。

4.本作ではどんな困難に直面し、それをどう乗り越えましたか?

今回の撮影ではドキュメンタリーというジャンルであることから、出演者との距離感に悩み続けました。彼らは実際に悩み、ぶつかり合い、傷つけ合います。カメラを向けることしかできない、向けているせいでネガティブなことが起きているのかもしれない。そんな自分に対する不信感を抱きながら撮影をしました。編集を進める中でもその気持ちは晴れず、完成まで解決することはなかったです。しかし関係者試写会をしたときに、出演者の方々に「この映画が宝になった」と言ってもらえました。その時少し心が救われた記憶があります。

5.本映画祭への応募動機と選出された心境は?

北海道に登竜門となっている著名な映画祭があることは北海道出身の人間として誇りで、いつか自分の映画が選出されることを夢見ていました。映画を作ることを目標にして10年ほど年月が経ち、思わぬきっかけで長編映画が出来上がりました。期待も薄く、できるだけ多くの方にこの作品を届けようという気持ちで出品しました。その結果として本映画祭に選出されたことは僕に自信と自作への活力を与えてくれましたが、まだ実感がないのが正直な心境です。この映画をより多くの方に観てもらえる機会を与えていただいてありがとうございます。

6.ご覧になる皆さんへメッセージを

「ビジネスホテル・ファミリー」というタイトルはホテルの名称ですが、家族のように一緒に暮らし続けることができない二人を皮肉っているようでもあります。そして、この作品はドキュメンタリーですが、一つのジャンルに絞れない内容です。実際に出来事が発生しているという事実があるのでホラーでもあるし、ラブストーリーでもあるし、青春ドラマでもあります。そのように僕自身もジャンルを絞り切ることはせず、しつこく撮り始めた作品ですので、観ていただく方々にも広く深い感想を抱いてもらえることができたら大変嬉しいです。