消えない虹

Eternal rainbow

2022年/日本語/日本/108分/ジャパンプレミア

解説

現在の女子中学生同士の殺人事件から26年前のかって起きた触法少年の少女殺人事件が浮かび上がる。時を経ても繰り返される幼き世代の犯罪。少年法により罪を償い、償われる機会を失った人々はどう生きれば良いのか?いつになったら人は許されるのか?どうすれば許すことが出来るのか?癒やされることのない傷を抱えた人々の希望と再生のヒューマンドラマ。監督は原田眞人、成島出、篠原哲雄、深川栄洋などの助監督を経て本作が長編映画初監督作品となる島田伊智郎。「見上げれば空があるように 気づけばいつもそこにある誰かに寄り添うような映画を作っていきたい。今作ははじめの一歩として 微かかもしれないけど確かな希望の光を届けたい」と渾身の思いを込めた作品。

あらすじ

「本当に幸せになっていいのか……」13歳の時に友達の犯行で妹を亡くした新聞記者の月野木薫。結婚式も控え、友人・岡田の子供たちの世話を手伝い、幸せな日々へ期待を抱く一方、亡き妹に対する後ろめたい気持ちが募る。そんなある日、中学校の屋上から女子生徒が転落死する事件が発生。薫が突き止めた加害少女は、岡田の娘・茜だった。そして、転落し亡くなった少女と家族同然の付き合いだった香川晃は、薫の妹を殺害した過去を持つ元加害少年だった。少年期とは逆の立場でその悲しみを知ることになった薫と晃。運命に引き戻された二人は、26年ぶりに再会することに……

監督

島田伊智郎
石川県白山市出身。1977年生まれ。映画監督。大学で自主映画制作をしていた従兄弟の影響で映画を志す。上京し、日本映画学校(現・日本映画大学)に入学。在学時から講師の誘いで映画の現場に入り、助監督として原田眞人、成島出、篠原哲雄、深川栄洋などの監督作品に参加、現在に至る。2020年に脚本・監督を務めた短編映画『顔』が第7回ネットシネマフェスティバルで上映された。助監督参加作品に、「バッテリー」「クライマーズ・ハイ」「わが母の記」「孤高のメス」「八日目の蝉」「ソロモンの偽証」「いつまた、君と~何日君再来~」などがある。

スタッフ&キャスト

監督/脚本 島田伊智郎
プロデューサー 齋藤しゅん
出演 内田周作、猪爪尚紀、矢崎希菜、野村麻純、吉本実憂、星川祐樹、大槻修治、世志男、平山さとみ、川口莉央裕樹
スタッフ 西村博光(撮影)/藤本賢一(録音)/長谷川剛(音響効果)/遠藤剛(美術装飾)/須永弘志(編集)/オダイッセイ(VFXスーパーバイザー)/斉藤博士(助監督)/近谷直之(音楽)/廣瀬太一(音楽プロデューサー)

上映スケジュール

Director’s Voice

1.映画制作をはじめたきっかけは?

野球しかやってこなかった私は高校最後の甲子園地方予選で敗退し、目標を失い放課後の時間を潰すために彷徨うようになりました。家に帰ればダラダラと過ごす私を見る母の悲しい目が耐えられなかったからです。そこで都合が良かったのが映画鑑賞でした。2時間ほどの時間をつぶすことが出来てなおかつ誰にも邪魔されない快適な環境。今は姿を消してしまった金沢市内の映画街に入り浸っていました。そして北陸は秋の終わりから春までずっと曇りのどんよりした天気。私の進路を表しているようで不安な日々でした。そんなある日、一本の映画と出会いました。主人公が何があっても地震の矜持を忘れずついには長いトンネルを抜けて雨に打たれ両手を拡げたシーンを見た時、「感動を人に伝えられるような仕事がしたい」と思い人生が変わりました。

2.影響を受けた作品や監督は?

初めての映画体験は、おじちゃんに連れて行ってもらい市民会館で見せてもらった「ゴジラ」でした。とにかく怖くていつもの町にゴジラが来ないか不安で空を眺めたのを覚えています。映画の存在を認知することになったのは「天空の城ラピュタ」で、スクリーンいっぱいに広がる大空の大冒険に胸を焦がしました。「ショーシャンクの空に」には人生そのものを変えるきっかけとなった感動を与えてもらいました。演出家としての方向性を決めるきっかけになったのは、相米慎二さんの「お引越し」と、橋口亮輔さんの「渚のシンドバッド」でした。いつもテレビで「さよなら」を連呼するおじさん(あえて、おじさん)には、映画でいろんな境遇の人の人生を体験することで自分の人生を深められることを教えてもらいました。

3.本作の制作動機、インスピレーションは何でしたか?

人生を変えたかった。また、これまで出会ってきた若い俳優たちに、私が伝え求めてきたことは間違いじゃないと示したかった。そして何より、痛いものは痛い、悪いものは悪い、そう言える忖度なしの映画があるべきだと思ったからです。企画したのは正にコロナ禍に入ったばかりで、どう生きていけばいいか見えにくくなった時でした。私も例外ではなく、不安を抱く人たちの助けになれるものを作りたかった。商業的ではないかも知れませんが、たまには人の生きざまを見せることで誰かの人生に寄り添うことが出来るような映画があってもいいのではないかと思いました。登場人物たちの生きる姿を通して感じてもらえるものがある。どんな事があっても明日を生きようと思ってもらえる。そんな映画になればと思います。

4.本作ではどんな困難に直面し、それをどう乗り越えましたか?

一番はコロナが始まったばかりだったということ。外出するのはもちろん、人に会うのも怖かった。マスクを手に入れるのも難しく、消毒液もアルコールで濃度は何%以上じゃないと……などの対応策すら模索中のタイミングでした。「こんな時期に映画なんて」という声が多くある中、「こういうときだからこそものづくりを止めてはいけない」「こういうときだからこそ誰かに寄り添う映画があるべきだ」と考え、とにかく前に進むことだけを考えました。企画を立ち上げる道程で、力を貸してくれる諸先輩方や、企画意図に賛同し一緒に夢を追いかけてくれた多くの俳優やプロダクション関係者の方々がいてくれたことは、本当に幸せでした。

5.本映画祭での上映が決定した心境は?

歴史があり文化として定着している映画祭の一部になれることはこれ以上ない幸福で、これまでの人生が報われたようです。夕張には篠原哲雄監督の「スイートハート・チョコレート」という映画の撮影で長期滞在し、地元の方々に大変お世話になりました。当時のフィルムコミッション担当者の方には「いつか映画祭にかけていただけるように頑張ります」と夢を語り、本作の関係者のお力で現実にしていただいたことに感謝してもしきれません。映画祭では映画への愛と情熱にあふれる方々とお会いできることを楽しみにしております。

6.ご覧になる皆さんへメッセージを

はじめに、皆様とお会いする機会をいただいたことに感謝いたします。ゆうばり映画祭で本作は初めて関係者以外の方々の目に触れ、産声をあげます。ご鑑賞いただく際には電車や自動車の車窓から世界を覗くように、スクリーンという窓からそこに生きる人間たちの生き様を覗いていただけたらと思います。登場人物たちは映画の中だけではなく、私達と同じ世界のどこかできっと生きています。鑑賞後には、フィクションの延長線上にいる誰かのことを思っていただけると幸いです。そして、本作があなたにとって明日を迎えるための力になることを願っています。
この映画を選んでいただきありがとうございます。あなたの大切な時間になりますように。