2022年/日本語/日本、フランス/30分/ワールドプレミア
解説
「生きていることと死んでしまっていることと、それは両極ではなかった。それほどに差はないような気がした」自身も2013年に身近な友人を自殺で失って以来、生と死という概念の更新やメンタルヘルスの改善、社会の周縁に生きる命への眼差しをテーマに映像製作を続けていた映画監督の太田信吾の脳裏に蘇ったのは志賀直哉の短編小説『城の崎にて』のこの一節である。彼はこの小説をコロナ禍の2021年に置き換えて映画化することを熱望。すぐさま、パリを拠点に活動する俳優の竹中香子とともに企画を開発した。本作は「湯治場」としての城崎を舞台に、現代における人それぞれの「病」と「治癒」のプロセスを描く傑作!
あらすじ
ヨーロッパでコロナ陽性者が爆発的に増える中、フランスで活動する俳優、縫(ぬい)は共演者だった男性をコロナ感染の影響で失う。つい先日まで彼と舞台の上でキスを交わしていたはずなのに、なぜ自分だけ生き残ってしまったのか…?繰り返し湧き上がる問いへの答えが見出せない彼女はある日を境に声が出なくなり、5年ぶりに日本への帰国を決意。城崎温泉へ養生にいくことに。偶然に亡くなった仲間と、偶然に生き延びた自分。自身の生を肯定することができないなか、昆虫エネルギー研究所所長、蛸川(たこがわ)と出会った縫は…。
監督
太田信吾
1985年生まれ。映画監督・俳優として活動。長野県出身。大学では哲学・物語論を専攻。大きな歴史の物語から零れ落ちるオルタナティブな物語を記憶・記録する装置として映像制作に興味を持つ。処女作の映画『卒業』がイメージフォーラムフェスティバル2010優秀賞・観客賞を受賞。初の長編ドキュメンタリー映画『わたしたちに許された特別な時間の終わり』がYIDFF2013で公開後、世界12カ国で公開。その後も映画『解放区』『想像』などエッジの効いた映画作品を手掛ける他、TV『情熱大陸』『『フードトラッカー峯岸みなみ』など演出を手掛ける。俳優としても活動しており最近の出演作に舞台『未練の幽霊と怪物』、ドラマ『夢を与える』(WOWOW)、『東京怪奇酒』(テレビ東京)などがある。
スタッフ&キャスト
監督 | 太田信吾 |
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プロデューサー | 香取英敏 |
脚本 | 竹中香子、太田信吾 |
出演 | 竹中香子、奥野美和、唄、キャファールさとう、酒井一途、かのうさちあ、小川祐章、小川惺史、寺内卓己 |
スタッフ | 太田信吾、竹中香子(企画)/稲荷森健(録音)/市村隼人(整音・フォーリーアーティスト)/星子駿光(カラリスト)/キャファールさとう(昆虫監修)/竹中香子(フランス語翻訳)/Bertrand Lauret(フランス語翻訳監修)/小林夢祈(助監督)/鈴木宏侑、市田鈴音(撮影助手)/小林夢祈、唄、酒井一途(ロケーションコーディネーター)/香取英敏(エグゼクティブプロデューサー)/酒井一途(ラインプロデューサー)/曽我満寿美(プロデューサー) |
© Hydroblast
上映スケジュール 7/28 thu – 8/1 mon
Director’s Voice
1.映画制作をはじめたきっかけは?
大学時代、哲学を専攻し物語るという行為の限界と可能性を考えてきました。そのことを追求をするための手段として映画を作るという集団での創作活動に興味を持ちました。
2.影響を受けた作品や監督は?
「萌の朱雀」「2/DUO」「マンハッタン」
3.本作の制作動機、インスピレーションは何でしたか?
コロナが蔓延し始めた2020年初頭、命を落とす人がで始める中で私の脳裏に蘇ったのが志賀直哉の短編小説『城の崎にて』の一節である。
「生きていることと死んでしまっていることと、それは両極ではなかった。それほどに差はないような気がした」
私自身も2013年に身近な友人を自殺で失って以来、生と死という概念の更新やメンタルヘルスの改善、社会の周縁に生きる命への眼差しをテーマに映画製作を続けていたため、この小説を今、映画にしたいと考えました。
4.本作ではどんな困難に直面し、それをどう乗り越えましたか?
不安定な天候や、昆虫を出演者に迎え入れたことによる不確実性の高まりによって撮影スケジュールがタイトになりましたが、チームワークで乗り越えられたと考えております。
5.本映画祭への応募動機と選出された心境は?
映画祭のプログラムに刺激を受けてきて、その内容も信頼していました。ワールドプレミアをこの映画祭で迎えられて嬉しいです。
6.ご覧になる皆さんへメッセージを
リラックスして楽しんでいただければ幸いです。