最も無害で、あまりにも攻撃的

Passive Aggressive

2022年/日本語/日本/40分/ワールドプレミア

解説

切実な映画が作ろうとしました。省察的でありながら、一個人を憂うのではなく構造を見つめられるような。社会の不均衡に対して個人的な怒り、やるせなさをもって対峙したときに「攻撃的だが無害」な人物になると思っています。自分が有する特権性や加害者性も意識しながら適切に怒る方法を模索する主人公を描くことは、既存のシステムにとって「有害」な存在になることの希望を示しています。私と同じように「抗おうとしている他者の存在」の確認を求めている人たちに、映画をもって見留めてもらえたらと思い、本作を製作しました。

あらすじ

夏休みに入る少し前、高校3年生の夏帆は制服のスカートを着た自分の姿を見ることにとうとう耐えられなくなっていた。スカートがもたらす、その柔らかいシルエット。漠然とした違和感が夏帆を責め立て、ひどく疲れ、何も言えず、何もできず、ただひたすらに自分の内で轟々と渦巻く激しい濁流を、じっと見つめている。静かな怒りを抱えたまま過ごす、夏の半ばの5日間。夏帆は別荘を売る準備のために、親と共に山梨へと向かう。

監督

中田江玲
慶應義塾大学環境情報学部在学中

スタッフ&キャスト

監督/撮影/編集 中田江玲
脚本 川端真央、中田江玲
脚本 齋藤大知、田中賢一郎
出演 日下玉巳、嶋村友美、明澄、田中栄吾、後藤ユウミ
スタッフ 牧野渚(衣装、メイク)/池田颯太(アシスタント)/岩崎はなえ(スペシャルサンクス)/野崎無害、masunoji(音楽)/Julia Takada “- Don’t Know Who I Am”Composed by Julia Takada、Ryuju Tanoue Lyricsby Julia Takada(挿入歌)

上映スケジュール 7/28 thu – 8/1 mon

Director’s Voice

1.映画制作をはじめたきっかけは?

映画のもつ緻密さや繊細さを自分が再現できるとは到底思えず、制作する前から諦めていました。ですが、高校生のときにUCLAで映画制作を体験できるサマープログラムに参加したことがきっかけで、作る楽しさを覚えてしまいました。それからは好きになれる映画を生み出すために邁進しています。

2.影響を受けた作品や監督は?

影響を受けた作品はたくさんありますが、本作を作るときによく考えていた映画はこれらです。
エリザ・ヒットマン「愛のように感じた」、ケリー・ライカート「オールド・ジョイ」、シャンタル・アケルマン「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」、ケイト・ショートランド「15歳のダイアリー」、セリーヌ・シアマ「燃ゆる女の肖像」、キリル・セレブレンニコフ「LETO」

3.本作の制作動機、インスピレーションは何でしたか?

マジョリティーのためのものではないクィアのためのカミング・オブ・エイジ・ムービーが日本であまり作られていないと感じており、私自身が欲していたため、この映画を制作しようという動機になりました。
相思相愛の恋愛関係を明示することがクィア表象になりがちな現状に対する違和感も、この映画を作りはじめた時から大事にしていることです。

4.本作ではどんな困難に直面し、それをどう乗り越えましたか?

映画を制作する上での課題や問題はたくさんありましたが、この映画を作ろうと呼びかけた私がそれらを「困難」という言葉のニュアンスのうちにまとめて良いものなのか分かりません。最後までこの映画に向き合ってくださった役者とスタッフにはとても感謝をしています。

5.本映画祭への応募動機と選出された心境は?

とにかく届けようとする試みが重要なのではないかと思い、本映画祭に応募しました。
誰かに評価されることを欲するのではなく、構造的な共通体験をもつ方と共に、じっと耐え続けられるような態度でいたいと思っています。

6.ご覧になる皆さんへメッセージを

日々の暮らしを続けていくためには、水のなかで息を止めるように、必要なことを必要でなかったかのように振る舞わなければならないのかもしれません。いろいろなことを見過ごしながら、それでもなかったことにはしないために、映画は作られ、解釈され続けているのだと思います。本作のいびつな抵抗を認識していただけたらうれしいです。