2021年 /韓国語/韓国/25分
解説
2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大で結婚式を延期したまま患者の診療をする中国人カップルを見て、非常に感銘を受けた。ウイルス感染の懸念から出会いへの不信が高まっている現在の状況で、心を閉ざしていた主人公が新たに出会った人に心を開く物語を作ろうと考えた。この映画を見る観客の皆さんが、克服への確信を持ち、未来に対する希望を失わないよう願う。主演は2020年のファンタスティックゆうばりコンペティションのグランプリ作品「湖底の空」で一人二役を演じたイ・テギョン。
2021年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門グランプリ作品。前年の「湖底の空」に続き、2年連続で主演作がグランプリ受賞したことから、今年のイ・テギョン来日が実現したことを記念して特別にリバイバル配信が決定!
あらすじ
コロナパンデミックが深刻になっても、イナには何の心配もない。イナはひきこもり。彼女の職業はウェブ小説作家だ。家に居ながらにして稼げるので外出する必要はない。食事や必要なものはオンラインで注文し、旅行をしたいときはVR機器とスマートフォンで各地を見物する。彼女はお気に入りのマネキン「デミアン」と暮らしている。デミアンは友達であり恋人であり、作品にインスピレーションを与えてくれる源泉だ。ある日、昼食にトンカツを注文したイナは、ドアスコープから見た配達員の顔がデミアンとそっくりなことを知り、平凡だった日常に徐々に亀裂が生じ始める。
監督
チョ・チャングン
延世大学で神学を専攻し、シナリオ作家として活動。短編映画「鳥は卵を割って出てくる」が釜山国際映画祭などに招待され、映画の演出をスタート。現在、韓国芸術総合学校(K-Arts)で演出を専攻する。
スタッフ&キャスト
監督/原作/脚本 | チョ・チャングン |
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プロデューサー | カン・ジウォン |
出演 | イ・テギョン、チャ・ソウォン |
スタッフ | ユン・ソグォン(照明)/イ・ドフン(撮影)/イ・スビン(音楽)/チョ・ジェグン(編集)/キム・ヨンソク(サウンド)/キム・ジェジン(VFX)/メン・ジェヨン(助監督) |
© Wise&Magnificent film company
上映スケジュール 7/28 thu – 8/1 mon
Director’s Voice
1.映画制作をはじめたきっかけは?
実はよくわかりません。ただ、大学生の時に1番多くの時間を割いたのが、映画を見ることでした。次に時間を使ったのがカメラを買って写真を撮ること、3番目は演劇サークルでの活動でした。思い返してみると、映画、イメージ(写真撮影)、ドラマに興味を持って没頭していたので、自然に映画を撮りたい気持ちになったようです。
2.影響を受けた作品や監督は?
ルフォンソ・キュアロン、ポール・トーマス・アンダーソン、コーエン兄弟の映画に多くのインスピレーションを得ています。成瀬巳喜男、今村昌平などの日本の古典映画や日本の現代映画、また、当然のことながら韓国映画からも影響を受けています。「おそとはキケン」は、ポール・トーマス・アンダーソンの「パンチドランク・ラブ」、スパイク・ジョーンズの「her/世界でひとつの彼女」、ジャン=ピエール・ジュネの「アメリ」、中島哲也の「嫌われ松子の一生」、スティーブン・スピルバーグの「レディ・プレイヤー1」などを参考にしました(もちろんこれらの映画には遠く及びませんが…)。
3.本作の制作動機、インスピレーションは何でしたか?
ギリシャ神話のピグマリオンからインスピレーションを受けて、自作の人形を愛する人物を登場させることを思いつき、この映画を作り始めました。ちょうど新型コロナによるパンデミックで全世界が急速に変わっていた頃で、現実を反映した映画を作りたいと思いました。「引きこもり」には否定的なイメージがありますが、今後はこういう生活スタイルが当たり前のものになるかもしれません。こうした杞憂と突拍子もない想像から生まれた映画です。
4.本作ではどんな困難に直面し、それをどう乗り越えましたか?
コロナ禍で、スタッフが集まることやロケ場所を借りること自体が非常に困難でした。当時は陽性者が急増していた時期だったからです。やむを得ず、スタッフや俳優に了解を得て撮影を何度か延期しました。参加してくれた方々の忍耐と作品への愛情によって完成させることができました。このような時に映画が作れたこと自体が奇跡といえるのかもしれません。参加してくれた方、協力してくれた方、すべてに心から感謝したいです。
5.本映画祭への応募動機と選出された心境は?
日本映画への関心が深かったので、日本の映画祭にも応募したいと考えていました。ゆうばり映画祭は本作の性格とよく合うと思いましたが、応募数が多く良作も多いのでそれほど期待はしていませんでした。上映が決まったという知らせを配給会社から聞いて、最初は少し戸惑いました。しかしすぐに現実感がわいてきて、とても嬉しかったです。今回招待された多くの優れた映画とともに日本の観客に出会う機会を得たという事実を光栄に思います。
6.ご覧になる皆さんへメッセージを
コロナパンデミックが1年を超え、もしかしたらコロナは終わらないのではないかという気もします。しかし克服への希望を捨てたくはありませんでした。すべての人が希望を失わないようにと願いながら、この映画を作りました。観客の皆さんに少しでも楽しんでもらえれば嬉しいです。