ツンドラ

Tundra

2021年/スペイン語/キューバ/30分/アジアプレミア

解説

個人は恐怖と欲望でできている。本作は、こうした衝動、つまり挫折した夢や、麻痺につながる深い恐怖についての映画である。普段は惰性と自動性に振り回されているキューバの生活の、幽霊のような側面を掘り下げていく。肉体的、精神的な障害に満ちた存在で、欲求不満が凝り固まり、前に進むことを許さない。主人公は、欲求不満の増大と同じようにどんどん大きくなっていく怪物と一緒に暮らしている。彼はその怪物を追い払う方法がわからず、結局受け入れてしまっている。それは、キューバ人の問題に対する反射的な反応、つまり諦観。それこそ国全体を病んでいる癌のメタファーである。

あらすじ

孤独な電気技師ラルデュエは、赤い女の夢を見る。その姿は脳裏から消えず、執着するようになる。彼女が近くにいることを、何かが告げている。ラルデュエは彼女の痕跡を追って荒れた街を彷徨う。

監督

ホセ・ルイス・アパリシオ
キューバ芸術大学(ISA)で映画・テレビ演出の学士号を取得。卒業制作の短編映画『El Secadero / Dryland』(2019)は、パナマのバナバフェストで最優秀フィクション賞、シネマ・シウダ・デ・メヒコで入選、キューバのムエストラ・ホヴェンで観客賞と最優秀制作賞を受賞した。中編ドキュメンタリー『Sueños a l p airo /Dreams adrift』(2020)は、キューバ政権の暴力的な歴史を批判したため、キューバ政府から検閲を受けた。

スタッフ&キャスト

監督/脚本 ホセ・ルイス・アパリシオ
プロデューサー レイラ・モンテーロ、ガブリエル・アレマ
ン、ダニエラ・ムニョス
脚本 カルロス・メリアン
出演 マリオ・ゲラ、ネイジー・アルピサル、ローラ・モリーナ、ホルヘ・モリーナ

上映スケジュール 7/28 thu – 8/1 mon

Director’s Voice

1.映画制作をはじめたきっかけは?

私は、映画監督である前に、映画愛好家であると思っています。思春期に出会ったデヴィッド・リンチ、マヤ・デレン、ルイス・ブニュエルの映画のおかげで、今日に至るまで映画を観ることをやめずにいいます。批評を読み、フィルモグラフィーに目を通し、主要な映画祭での受賞歴に目を通す。友人を説得して、私の最初の短編映画を一緒に撮影したこともあります。学位取得の5年間、経済的苦難、技術的不安定、教育的ギャップ、美的誤解の間で私を支え続けた唯一の信念は、映画に対する私の不滅の情熱でした。私の最近の作品のうち2本が、最初は学術的な分野で、次にキューバの公式映画協会(ICAIC)で検閲を受けたとしても、創作と企画を続ける意欲を失うことはありませんでした。制限を創造的な事柄に変えなければならないのです。私にとって疑う余地のない唯一のものは、独立性、創作の自由です。

2.影響を受けた作品や監督は?

私は大の映画好きで、さまざまな作家の作品を楽しんでいます。今回、ゆうばりファンタで上映する最新作『ツンドラ』では、デヴィッド・リンチの雰囲気や夢の論理、デヴィッド・クローネンバーグのボディホラー、アンジェイ・ジュワフスキの神経質な象徴主義に大きな影響を受けています。他にもブライアン・デ・パルマの華麗なカメラワーク、ダリオ・アルジェントの飽和した色彩パターン、日本の美しい春画の伝統(特に触手モンスターに関連した場合)、ベーラ・タールの入念なコアグラフによる退廃、テリー・ギリアムのディストピア的世界など。また、キューバの偉大なジャンル映画作家、ホルヘ・モリーナの作品の影響も大きく、彼は本作にも出演しています。

3.本作の制作動機、インスピレーションは何でしたか?

個人は恐怖と欲望でできています。『ツンドラ』は、こうした衝動、つまり挫折した夢や、麻痺につながる深い恐怖についての映画です。私はキューバを、何も育たず、何も起こらない荒涼とした風景として見ています。この国は、私たちの内なる混沌を現しており、災害の名残の地帯として存在しています。大災害は過去のある時点で静かに発生しましたが、私たちは何事もなかったかのように生活を続けているだけである。本作は、普段は惰性と自動性に振り回されているキューバの生活の、幽霊のような側面を掘り下げていきます。肉体的、精神的な障害に満ちた存在で、欲求不満が凝り固まり、前に進むことを許さない。主人公は、欲求不満の増大と同じようにどんどん大きくなっていく怪物と一緒に暮らしている。彼はその怪物を追い払う方法がわからず、結局受け入れてしまっている。それはキューバ人の問題に対する反射的な反応であり、諦観です。それは、国全体を病んでいる癌のメタファーです。

4.本作ではどんな困難に直面し、それをどう乗り越えましたか?

『ツンドラ』は、ハバナに拠点を置き、20代の映画作家たちによって設立されたインディペンデント会社、エスタジオSTによって製作されました。キューバでは数年前まで独立系映画会社は合法ではなく、今でも多くの政治的・財政的困難に直面しており、低予算と限られたリソースで本作のような複雑な映画を成し遂げるのは途方もない仕事です。この映画は、クリエイティブで強烈なオンラインキャンペーンと亡命キューバ人コミュニティのサポートのおかげで、一部クラウドファンディングで資金を調達することができました。私の前作であるドキュメンタリー映画『SUEÑOS AL PAIRO / DREAMS ADRIFT』(2020年)は、2020年の初めにキューバ政府によって検閲されたため、『ツンドラ』の撮影は、島内の独立芸術に対する非常に緊張した政治環境の中で行われました。撮影許可証は最初の撮影の前日に取得され、公式の理由が曖昧なまま終盤に近づくと数日間制作が停止されました。その上、Covid-19のパンデミックにより、撮影は1年近くも遅れました。

5.本映画祭への応募動機と選出された心境は?

ゆうばりファンタは、私にとってはアジアで最も素晴らしい映画祭のひとつです。私は、ジャンルの慣習にとらわれない作家的な感性をサポートするジャンル映画祭が大好きです。また、思いやりのあるチームと忠実なファンベースを持つ映画祭にいつも感心しています。なぜなら、日本の文化、特に映画と視覚芸術は、私の映画の美学と精神に非常に深く関わっているからです。日本の観客がどのような感想を持つのか、ぜひ聞いてみたいものです。Huluでの上映は、この美しい国中の人々がこの映画を楽しめるようになると思います。最後になりましたが、クエンティン・タランティーノ、コーエン兄弟、塚本晋也、川尻善昭、ロバート・ロドリゲス、ギャスパー・ノエ、アレックス・プロヤスといった私のヒーローたちの作品を受け入れている映画祭で私の映画が選ばれたことは、大変光栄に思っています。このような良い仲間に恵まれたことは素晴らしいことです。

6.ご覧になる皆さんへメッセージを

偉大な映画監督ミケランジェロ・アントニオーニがよく言っていた言葉です。「言葉で説明できるような映画は、本当の映画ではない」。『ツンドラ』の観客は、ストーリー以上に、ハラハラするような体験の中に身を置くことになります。現代のキューバの退廃的で分裂的な次元に浸る映画であり、破滅した国を正直に、隠喩的に描いています。この作品は、リアリズムの一見客観的な真実よりも、感情的な真実 ―ヴェルナー・ヘルツォークが定義した「恍惚の真実」― に重きを置いています。あなたの存在を妨げるさまざまな問題、つまり、人が克服する代わりに抑圧することを選択したものについて考えさせるでしょう。また、夜行性の生物が織りなす奇妙で魅惑的な世界へとあなたを誘うでしょう。誰かに言いにくい、でももう一度観てみたい、そんな不穏な夢のような作品です。